2010年03月19日

<250にこまる食堂>年会費1000円でランチ250円に 若者の職業訓練などを支援 広がる共感(毎日新聞)

 年会費1000円を払うと250円でランチを食べられる「250にこまる食堂」が広がっている。単なる格安ランチではなく実は、年会費を積み立てた基金で、生きづらさを抱える若者の職業訓練などを支援するプロジェクトだ。そうした若者も勤める横浜市の5店で始まり、東京都内の居酒屋が2月下旬に加わった。居酒屋の山本友大店長(32)は「最初は赤字になっても、とにかく多くの人に食べに来てもらって社会貢献も商売も両立させたい」と意気込む。【杉埜水脈】

 「親子(丼)オッケーイ!」。威勢の良い店員の声が飛び交う。JR蒲田駅前の居酒屋「叶え家」(東京都大田区西蒲田7)のランチタイム。だしの染みた鶏肉に半熟卵が絡む親子丼や、香ばしいカツカレーなど6種類のメニューが、どれも250円(非会員は300円)だ。山本さんは「せめて390円でやりたかった」と苦笑する。

 「にこまる食堂」は、親らが設立した基金に年会費が寄付され、若者のジョブトレーニング費や運営費、新店舗設立資金に充てる仕組み。非会員に上乗せされた50円も寄付に回る。若者自立支援活動を約20年間続けるK2インターナショナルジャパン(横浜市磯子区)が昨夏、市内で自営するお好み焼き店やカフェ計5店で始めた。今では1日計約250〜300食が売れる。

 5店は、長期間のひきこもりや軽度の発達障害などのために、一般企業になじみにくい若者の職業訓練や雇用の場でもある。彼らに飲食業について講義した縁で山本さんは2年前、K2スタッフと知り合った。叶え家の店員は特に問題を抱えた若者ではないが、250円という値段に「中途半端でない決意」を感じ「にこまる食堂」に参加した。非会員にも250円で提供中の3月末までに「1日100食」が目標だ。

 250円の秘密は、人脈を生かして協力的な業者や農家から仕入れる食材の安さ。K2の場合、親や支援者らが寄付する食材も豊富だ。寄付を受けた自家栽培の白菜がキムチや豚キムチ丼になったり、柿やミカンが無料で追加されたりする。

 プロジェクトリーダーの岩本真実さん(39)は「仕入れ努力や営業努力で成り立つ値段設定」と言う。寄付のおかげで収益を出すことも十分可能だという。また若者支援だけではなく「誰でも安心して、温かくておいしいご飯が250円で食べられる場所を提供する社会運動」として全国に広げることを目指している。問い合わせ先はK2(045・752・5066)。

【関連ニュース】
社員食堂のヘルシーメニューは。
BOOK:『おもひで食堂』
暮らし・教育 『しあわせ食堂』=武内ヒロクニ+毎日新聞夕刊編集部
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2010年03月18日

救えなかった命…無念抱え 長崎屋火災から20年、元救助隊長が定年(産経新聞)

 ■防災指導に尽力「忘れぬ」

兵庫県尼崎市で平成2年、15人が犠牲になったスーパー「長崎屋尼崎店」の火災の際、現場に一番乗りして4人を救助した市東消防署主任、小野廣幸さん(60)が、今月末で定年を迎える。火災は18日で発生から20年。「あのとき助け出せなかった人のことを忘れたことはない。ちゃんとした防火対策がとられていれば…」。救えなかった命への無念を抱えながら、防災訓練の指導などに精を出し、任務を終えるまでの日々を過ごしている。

 20年前の3月18日、昼過ぎ。市消防局の救助隊長だった小野さんは、隊員3人とともに長崎屋尼崎店に急行した。現場に到着したのは119番から4分後。しかし、最上階の5階の窓からは、すでにもうもうと黒煙が噴き出していた。

 消防車を横付けできなかったため、隣のビルの窓から5階にはしごを渡す。腕時計のベルトがちぎれるほどの熱が立ちこめる中、救助活動を始めた。

 1人、2人、3人、4人…。5人目の女性を助け出そうと手を伸ばした瞬間、女性は意識を失い、差し出された手を握ることなく黒煙の中に姿を消した。

 「42年間の消防士生活の中で、あのときのことが一番悔しくて忘れられない」。小野さんは、目の前の命を救えなかったことを今も振り返る。

 県警は放火事件と断定。店側の防火対策のずさんさも次々と明らかになった。積み上げられた段ボールにさえぎられ、防火扉が閉まらなかった。火災報知機の誤作動が多発していたため、従業員の初期消火も鈍かった。こうしたことも、小野さんの無念さに拍車をかけた。

 同店での火災を受け、2年12月に消防法施行令が改正され、スプリンクラーの設置基準が強化された。その後も、大規模な火災で犠牲者が出るたびに、防火対策の見直しが繰り返されている。

 「大規模な火災のニュースを見るたびに『なぜだ』と心が痛む。火災の後で法が改正されるのでは、真の防災ではない。建物の管理者が過去の火災を教訓に防災への意識を高めなければ、何年たっても悲劇は繰り返される」

 小野さんは現在、後進の育成に力を注ぎながら、出勤日数の半分以上は地域の防災訓練に出向き、必ずこう話している。「1秒でも早く通報すること。日ごろの強い防災意識が、人の命を救います」

【用語解説】長崎屋尼崎店火災

 平成2年3月18日午後0時半ごろ、長崎屋尼崎店4階のカーテン売り場から出火。小中学生や店員ら計15人が死亡し、6人が重軽傷を負った。兵庫県警は放火と断定し、捜査本部を設置したが、17年に公訴時効が成立。一方、防火扉の前に荷物を放置するなど防火管理上の義務を怠ったとして、当時の店長ら2人が業務上過失致死傷罪に問われ、神戸地裁尼崎支部の有罪判決が確定した。

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2010年03月16日

<東京大空襲>世話した孤児320人 きっと立派に(毎日新聞)

 東京・上野駅の地下道の片隅に10日午後、おむすびやリンゴ、きりたんぽが白ユリの花束と一緒にそっと供えられた。約10万人が亡くなった東京大空襲からちょうど65年。焼け出されて家も家族も失った戦災孤児たちが集まり、餓死者も出たのがこの地下道だった。320人もの孤児を故郷へ連れ帰って世話した北秋田市の元地方紙記者、豊村政吉さん(82)は約20年ぶりに上野を訪れ「二度と戦争、空襲のない世界に」と手を合わせた。【真野森作】

 豊村さんは戦時中、爆弾を背負って敵の戦車に体当たりする部隊に所属していた。戦争が終わると、沖縄に出征した兄に会えるかもしれないと考え、旧植民地などからの引き揚げ者を支援する仕事に従事し始めた。戦災孤児に出会ったのは、そのころのことだ。

 コンクリートの床に新聞紙やむしろを敷いて眠り、ぼろぼろの服を着たあかまみれの子供たち。地下道を通りかかるたびに「おじさん、ごはんちょうだい」とせがまれ、助けたいと思うようになった。

 最初に3人の男の子を連れ帰った時、自身はまだ18歳だった。実家や周囲の農家の助けも借りながら次々と子供たちを受け入れた。「秋田へ行ったら銀シャリが食べられる」。そう伝え聞き、無賃乗車で訪ねて来た子供もいた。

 兄の戦死を知ると、生まれ変わりを育てるような気持ちで田畑を売って資金に充てた。消防団のポンプ置き場の2階を借りて「戦災引揚孤児の家」を設け、51年には平屋建ての公営住宅を利用して「少年の家」を開いた。

 豊村さんは80歳ごろまで地元の新聞社に勤め、記者の仕事を続けたが、3年前に大腸がんを患った。体調を崩したこともあって一線を退いたが「節目の年に追悼したい」と吹雪の秋田から上京した。

 孤児の支援は60年ごろまで続いた。1週間ほどで姿を消す子が多かったが、数年にわたって滞在し、家族のように育てた子もいた。15、16歳になると「東京に帰って一旗あげてくる」と巣立っていった。「きっとどこかで立派に成人して暮らしていると思う」。豊村さんは表情を緩めた。

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