2010年03月23日

「まま ずうっとすき」継母はなぜ虐待したのか(産経新聞)

【衝撃事件の核心】

 昨年11月、兵庫県三田市のマンションで家族4人で暮らしていた女の子が、わずか5歳で亡くなった。利発で人なつっこく、幼稚園でも人気者だった寺本夏美ちゃん。転倒し頭を打ったとして病院に搬送されてから、5日後のことだった。だが3カ月余りが過ぎた今年3月、兵庫県警は虐待により夏美ちゃんを死亡させたとして、傷害致死容疑で継母の無職、寺本浩子容疑者(27)=秋田県小坂町=を逮捕した。「シンデレラ」や「落窪物語」のように、昔からあったとされる継子いじめ。だが一方的に憎しみを募らせた末の典型的な児童虐待ではなく、寺本容疑者は育児に悩んでいた様子もうかがえる。夏美ちゃんはなぜ、どうやって短い生涯を終えることになったのか…。(稲場咲姫)

 ■「外傷なし」が決め手に

 「子供がベランダで転んだんです。意識がなく、呼吸もあるか分からない」

 電話口の声はうわずり、震えていた。三連休が明けたばかりの昨年11月24日午後3時47分。三田市消防本部に119番が入った。

 JR福知山線三田駅から徒歩で10分ほどの距離にある築20年弱のマンション。その2階の一室に救急救命士を含め4人の救急隊員が駆けつけると、居間にあおむけで横たわっている女児の姿が目に入った。それが、夏美ちゃんだった。

 肩をたたいて呼びかけるが、反応はない。瞳孔も開いている。かたわらの寺本容疑者はおろおろするばかりで、「なつ、なつ」と繰り返しながら夏美ちゃんの体をさすっていた。

 救急病院に搬送された夏美ちゃんは、ICU(集中治療室)で治療を受けた。しかし一度も意識を取り戻すことなく、11月29日午後1時7分、息を引き取った。死因は、頭部に衝撃が加えられて生じた急性硬膜下血腫による脳機能障害だった。

 だが、病院は当初から虐待を疑っていた。病院関係者は言う。「転倒してできた傷害かどうかは、医師ならまず間違いなく判断できる」

 このため搬送当日に「虐待の可能性がある」と県警に通報。県警が行った司法解剖の結果も、医師の判断と一致した。「転倒したならあるはずの外傷がない。にもかかわらず硬膜下血腫を起こしたのは、頭を激しく揺さぶられた可能性が極めて高い」(捜査関係者)。県警は近年、児童虐待の新たな類型として注目されている「乳幼児揺さぶられ症候群」(SBS)の疑いを強めた。

 SBSは子供の肩をつかむなどして激しく揺すった際に、脳が頭蓋骨の内側に打ち付けられて発症するとされる。日本小児科学会の児童虐待の診療手引きによると、硬膜下で出血を起こすことが圧倒的に多いという。

 県警はまず、昨年6月24日に夏美ちゃんに暴行を加えたとする傷害容疑で、今年2月11日、夏美ちゃんの死後まもなく離婚し郷里の秋田県小坂町に帰っていた寺本容疑者を逮捕。さらに同罪で起訴した後の3月5日、傷害致死容疑で再逮捕した。

 ■“おばあちゃんママ”を訪ね7キロを

 親族らによると、寺本容疑者と夏美ちゃんの父親(30)が知り合ったのは、平成19年の秋ごろだった。父親は大学時代に出会った夏美ちゃんの実母と結婚したが、実母は悪性リンパ腫のため26歳の若さで他界。わずか2歳で母親を失った夏美ちゃんのためにも再婚を、と考えていた時期だったという。大阪市や神戸市のベッドタウンである三田市と、青森との県境、十和田湖沿いにある小坂町。750キロ以上離れた町に住む2人が知り合ったきっかけは、インターネットの会員制サイト「mixi(ミクシィ)」だという。

 その後、交際を深めた2人は20年3月に結婚。一人っ子だった夏美ちゃんにとって初めてのきょうだいとなる弟もほどなく生まれ、家族4人での暮らしが始まった。

 だが、夏美ちゃんの新しい母親との暮らしの異変に気づいたのは、父方の祖母(56)だった。

 「声がするのでドアを開けたら、夏美がいるんです。もうびっくりして…」。昨年4月10日、夏美ちゃんが三田市の自宅マンションから約7キロ離れた祖父母の家を、突然訪ねてきたのだ。

 祖父母は夏美ちゃんの実母が亡くなった後、夏美ちゃんを自宅に預かり親代わりになって育てていた。そして、父親の仕事が休みの週末は三田市のマンションへ。そんな生活が寺本容疑者と再婚するまで2年余り続いた。だから夏美ちゃんも道はよく知っている。それでも当時4歳だった夏美ちゃんが一人きりで2時間かけて歩いてくるのは、よほどのことに違いなかった。

 「事情を聴いたら、『ママに追い出された』と言うんです。あの子は私のことを『おばあちゃんママ』と慕ってくれていました。だから必死の思いで来たんでしょう」

 すぐさま電話で寺本容疑者を問いつめたが、その答えも、祖母を愕然とさせるものだった。「私は夏美に母性がない。だから、好きなところに行くように言ったんです」

 ■まま ずうっとすき

 夏美ちゃんが虐待を受けていると感じた祖母は、三田市のこども課に相談した。しかし夏美ちゃんが通っていた市立幼稚園の園長はこども課からの連絡を受け、意外だったという。

 「本当におとなしそうなお母さんで…。ただ、育児に悩んでいる様子はあった。『急に4歳児の母親になって戸惑っている』と相談を受けたこともある。でも、『義理の母親だけど頑張ります』と話していたんです」

 それでも注意深く様子を見守っていた6月25日、夏美ちゃんがほおを腫らして園に現れた。「昨日、ママにばーんとされた」。すぐさまこども課に報告し、県川西こども家庭センターが夏美ちゃんを一時保護した。

 保護後に園から連絡を受け、泣きながら「(しつけを)やりすぎてしまいました」と話したという寺本容疑者。センターの職員に対しても「実の母親のようになりたいと思い、必死でやってきた」と訴えたという。

 その後、寺本容疑者が自らのしつけが誤っていたことを認め、周囲のサポート体制も整ったため、センターは家庭復帰が可能と判断。夏美ちゃんは約1カ月で自宅に戻った。寺本容疑者の育児の負担を減らすため、幼稚園に代わり新たに通うことになった保育園の園長は「夏美ちゃんはお母さんの膝の上に乗って甘えたり、作ってもらったお弁当を見せてくれたり…。過去に虐待を受けたことがあっても、ふつうの親子仲にみえた」と振り返る。

 だが、祖母の見方は異なる。「あるとき、なぜ夏美をそんなに厳しくしつけようとするのか聞いたことがあるんです。答えは『私も母親から同じしつけを受けた』でした。夏美はそういう新しい母親に慣れようと、気に入られようとしていたんです」

 再び始まった家族4人での暮らしは、わずか4カ月で終わりを告げた。寺本容疑者は傷害の逮捕容疑となった6月24日の暴行については逮捕当初認めていたが、その後は夏美ちゃんが死亡した経緯も含め「話したくありません」と説明を拒んだという。

 結婚する際、周囲に「私が夏美ちゃんの母親になる」と告げたという寺本容疑者。その歯車は、どこかで狂ってしまったのか。夏美ちゃんがセンターに保護されている間につけていた絵日記には、幼い字でこうつづられていた。

 《まま ずうっとすき》

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2010年03月19日

<250にこまる食堂>年会費1000円でランチ250円に 若者の職業訓練などを支援 広がる共感(毎日新聞)

 年会費1000円を払うと250円でランチを食べられる「250にこまる食堂」が広がっている。単なる格安ランチではなく実は、年会費を積み立てた基金で、生きづらさを抱える若者の職業訓練などを支援するプロジェクトだ。そうした若者も勤める横浜市の5店で始まり、東京都内の居酒屋が2月下旬に加わった。居酒屋の山本友大店長(32)は「最初は赤字になっても、とにかく多くの人に食べに来てもらって社会貢献も商売も両立させたい」と意気込む。【杉埜水脈】

 「親子(丼)オッケーイ!」。威勢の良い店員の声が飛び交う。JR蒲田駅前の居酒屋「叶え家」(東京都大田区西蒲田7)のランチタイム。だしの染みた鶏肉に半熟卵が絡む親子丼や、香ばしいカツカレーなど6種類のメニューが、どれも250円(非会員は300円)だ。山本さんは「せめて390円でやりたかった」と苦笑する。

 「にこまる食堂」は、親らが設立した基金に年会費が寄付され、若者のジョブトレーニング費や運営費、新店舗設立資金に充てる仕組み。非会員に上乗せされた50円も寄付に回る。若者自立支援活動を約20年間続けるK2インターナショナルジャパン(横浜市磯子区)が昨夏、市内で自営するお好み焼き店やカフェ計5店で始めた。今では1日計約250〜300食が売れる。

 5店は、長期間のひきこもりや軽度の発達障害などのために、一般企業になじみにくい若者の職業訓練や雇用の場でもある。彼らに飲食業について講義した縁で山本さんは2年前、K2スタッフと知り合った。叶え家の店員は特に問題を抱えた若者ではないが、250円という値段に「中途半端でない決意」を感じ「にこまる食堂」に参加した。非会員にも250円で提供中の3月末までに「1日100食」が目標だ。

 250円の秘密は、人脈を生かして協力的な業者や農家から仕入れる食材の安さ。K2の場合、親や支援者らが寄付する食材も豊富だ。寄付を受けた自家栽培の白菜がキムチや豚キムチ丼になったり、柿やミカンが無料で追加されたりする。

 プロジェクトリーダーの岩本真実さん(39)は「仕入れ努力や営業努力で成り立つ値段設定」と言う。寄付のおかげで収益を出すことも十分可能だという。また若者支援だけではなく「誰でも安心して、温かくておいしいご飯が250円で食べられる場所を提供する社会運動」として全国に広げることを目指している。問い合わせ先はK2(045・752・5066)。

【関連ニュース】
社員食堂のヘルシーメニューは。
BOOK:『おもひで食堂』
暮らし・教育 『しあわせ食堂』=武内ヒロクニ+毎日新聞夕刊編集部
若者自立支援基金:年会費1000円でランチ250円 にこまる食堂に共感 /神奈川
花開け・徳栄のセンバツ:甲子園出場祝い、食堂に牛ステーキ定食 /埼玉

30代女性の財布に負ける諭吉1枚 会社員の懐具合 民間調査(産経新聞)
東ティモールPKOの川上氏急死(時事通信)
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2010年03月18日

救えなかった命…無念抱え 長崎屋火災から20年、元救助隊長が定年(産経新聞)

 ■防災指導に尽力「忘れぬ」

兵庫県尼崎市で平成2年、15人が犠牲になったスーパー「長崎屋尼崎店」の火災の際、現場に一番乗りして4人を救助した市東消防署主任、小野廣幸さん(60)が、今月末で定年を迎える。火災は18日で発生から20年。「あのとき助け出せなかった人のことを忘れたことはない。ちゃんとした防火対策がとられていれば…」。救えなかった命への無念を抱えながら、防災訓練の指導などに精を出し、任務を終えるまでの日々を過ごしている。

 20年前の3月18日、昼過ぎ。市消防局の救助隊長だった小野さんは、隊員3人とともに長崎屋尼崎店に急行した。現場に到着したのは119番から4分後。しかし、最上階の5階の窓からは、すでにもうもうと黒煙が噴き出していた。

 消防車を横付けできなかったため、隣のビルの窓から5階にはしごを渡す。腕時計のベルトがちぎれるほどの熱が立ちこめる中、救助活動を始めた。

 1人、2人、3人、4人…。5人目の女性を助け出そうと手を伸ばした瞬間、女性は意識を失い、差し出された手を握ることなく黒煙の中に姿を消した。

 「42年間の消防士生活の中で、あのときのことが一番悔しくて忘れられない」。小野さんは、目の前の命を救えなかったことを今も振り返る。

 県警は放火事件と断定。店側の防火対策のずさんさも次々と明らかになった。積み上げられた段ボールにさえぎられ、防火扉が閉まらなかった。火災報知機の誤作動が多発していたため、従業員の初期消火も鈍かった。こうしたことも、小野さんの無念さに拍車をかけた。

 同店での火災を受け、2年12月に消防法施行令が改正され、スプリンクラーの設置基準が強化された。その後も、大規模な火災で犠牲者が出るたびに、防火対策の見直しが繰り返されている。

 「大規模な火災のニュースを見るたびに『なぜだ』と心が痛む。火災の後で法が改正されるのでは、真の防災ではない。建物の管理者が過去の火災を教訓に防災への意識を高めなければ、何年たっても悲劇は繰り返される」

 小野さんは現在、後進の育成に力を注ぎながら、出勤日数の半分以上は地域の防災訓練に出向き、必ずこう話している。「1秒でも早く通報すること。日ごろの強い防災意識が、人の命を救います」

【用語解説】長崎屋尼崎店火災

 平成2年3月18日午後0時半ごろ、長崎屋尼崎店4階のカーテン売り場から出火。小中学生や店員ら計15人が死亡し、6人が重軽傷を負った。兵庫県警は放火と断定し、捜査本部を設置したが、17年に公訴時効が成立。一方、防火扉の前に荷物を放置するなど防火管理上の義務を怠ったとして、当時の店長ら2人が業務上過失致死傷罪に問われ、神戸地裁尼崎支部の有罪判決が確定した。

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